ミオスタチン遺伝子と競走馬

今年に入ったくらいから日本国内でも徐々に話題にのぼることが増えたのが競走馬(サラブレッド)におけるミオスタチン遺伝子の検査です。

細かい説明を省いて結論から言うと、サラブレッドの染色体(サラブレッドの染色体は64本です。人間は46本)の中にあるミオスタチンという遺伝子のDNA塩基配列によって競走馬の筋肉量が変わり、その結果競争に向いている距離が変わるというものです。

DNA塩基配列は「A」「G」「T」「C」の4つで構成されますが、ミオスタチンが関連する18番目の染色体のDNA配列は「C(シトシン)」「T(チミン)」の2種類の組み合わせで構成されます。なので

  • C/C型

  • C/T型

  • T/T型

この3つがサラブレッドのミオスタチン遺伝子の型となります。

筋肉の量と距離適性で分類すると

  • C/C型:筋肉量が多く短距離向き(1,000M〜1,600M)

  • C/T型:標準的な筋肉量で中距離向き(1,400M〜2,400M)

  • T/T型:筋肉量が少なく長距離向き(2,000M以上)

このようになります。

「筋肉量が多い=短距離」と決めつけるのは強引な気がしますが、サラブレッドは言うなれば究極のアスリートなので突き詰めればそういうことになるのかもしれません。

人間で考えると確かに納得できる部分があり、

  • 100メートル・200メートル走の選手

  • 800メートル・1600メートル走の選手

  • マラソン選手

この3つの競技者の筋肉量を比較すると明らかに距離が短い選手の方が筋肉量が多いです。

ということは、生まれつきT/T型の遺伝子を持っている競走馬に対して、1,000Mの競争に出走させることは明らかに不利になります。

ミオスタチン遺伝子の型を調べずにいた場合、どの距離のレースに向いているかを判断するのは人です。

競走馬をどの距離のレースに出走させるかを判断する時に使う要素は

  • 体型

  • 筋肉量

  • 血統

  • 調教での動き

などがあり、これまでも筋肉量の有無は判断材料として存在していました。

とは言え競馬は「ブラッドスポーツ(Blood sports)」と呼ばれるように、血統を非常に重要視します。

2014年の皐月賞(距離2,000メートル)に優勝し、日本ダービー(距離2,400メートル)でも2着になったイスラボニータという馬が象徴的です。

イスラボニータの父はフジキセキという種牡馬で、1,600メートル前後の比較的短い距離で実績のある種牡馬です。さらに、母親の父親はコジーンという種牡馬でこちらも1,600メートル前後の距離で実績のある種牡馬です。

こんな血統背景でしたが、イスラボニータのミオスタチン遺伝子の型C/C型でなく、C/T型でした。

イスラボニータの馬体を見ると確かに筋骨隆々というタイプではありませんし、逆に筋肉量の少ないステイヤー体型でもありません。

しかし、父親と母方の祖父が短い距離に向いているということで、競馬では中距離の範疇にくくられる2,000メートルの皐月賞ではそれまでの抜群の実績にも関わらずイスラボニータの単勝は2番人気でした(結果は優勝)。

皐月賞の次走の日本ダービーではさらに400メートル距離が伸びるので、距離に対する不安が再度囁かれましたが結果優勝馬と僅かな差の2着に頑張りました。

結果だけをみればミオスタチン遺伝子の評価は正しかったということになります。

短い距離と長い距離を走る馬ではトレーニング方法が異なります。つまり、最初から適正な距離を把握していれば初期の段階から適性に相応しいトレーニングを積み、適性に合った距離のレースに出走させることができます。

サラブレッドは結果を出さなければ生殖的に淘汰されていく生き物ですし、そもそも非常に高価な生き物です(安くても数百万円。高ければ1億円以上。さらに毎月数十万円が食事代等で必要)。

競走馬として生涯で出走できるレース数は限られているので、あらかじめ向いている距離がわかれば無駄にレースに使って消耗させることも無くなります。

ヨーローッパ・オセアニアを中心にかなりの数の競走馬のミオスタチン遺伝子と競争能力のサンプルが集まっているようなので、統計的な部分でもミオスタチン遺伝子と適性距離は関連づけが完了するかもしれません。

人間だけでなく、競走馬も遺伝子検査によるテーラーメイド医療ならぬ「テーラーメイド調教」やサプリメントを与える時代が近づきつつあるのは間違いありません。


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